
人工衛星は、通信、地球観測、宇宙環境監視、科学観測など、幅広い分野で利用されています。
特に地球観測衛星は、地上からでは把握しにくい広い地域を継続的に観測し、農林水産業、防災、環境保全などに必要な情報を提供します。
HISPECは、衛星やセンサーを開発するだけでなく、利用者が抱える課題を明らかにし、その解決に必要な観測頻度、空間分解能、観測波長、解析方法、情報提供サービスなどを、衛星の設計段階から反映することを目指しています。
衛星の利活用
衛星の利活用方法は様々ありますが、ここでは以下の3つについてご紹介します。
リモートセンシング

衛星によるリモートセンシングは、地上からでは把握しにくい広い地域の状況を継続的に観測できるため、農林水産業、防災、環境保全など、さまざまな分野での活用が期待されています。
農業への利用
農業分野では、次のような利用が期待されています。
- 作物の生育状況の把握
- 収量や収穫時期の予測
- 病害虫による被害の早期発見
- 土壌水分量の推定
- 作物の栄養状態の推定
- 農地分布や作付面積の把握
NDVIなどの植生指数は、作物の量や活力の把握に広く利用されています。一方、限られた波長帯から計算される指標だけでは、病害、栄養状態、水分ストレスなど、似た反応を示す現象を区別することが難しい場合があります。
より詳細なスペクトル情報と現地調査データ、AIなどの解析手法を組み合わせることで、生育状態や病害をより詳しく判別できる可能性があります。
より詳細なスペクトル情報を取得することで、水稲の収量、タンパク含有率、いもち病などと関係する波長を探索し、精度の高い生育診断や収量予測につなげられる可能性があります。
また、バナナやオイルパームなどの病虫害についても、詳細なスペクトル情報とAIを組み合わせることにより、感染した植物や被害地域の判別に活用できると期待されています。
防災・災害監視への利用
衛星観測は、広域で発生する災害や、人が立ち入りにくい地域の状況把握に活用できます。
想定される利用分野には、次のようなものがあります。
- 火山活動の監視
- 津波被害の状況把握
- 森林火災の検知・監視
- 地すべりの把握
- 洪水・浸水域の把握
- 台風や豪雨の観測
- 被災地域の継続的なモニタリング
従来の衛星では、観測頻度、空間分解能、観測可能な波長帯、データ提供までの時間などが、利用者の要求を満たさない場合があります。
複数の小型衛星を活用し、観測が必要な地域を優先的に撮影することで、必要な場所をより高い頻度で監視できる仕組みの構築を目指しています。
水産業・海洋環境への利用
衛星データは、海色、海面水温、海面高度などを広域的に把握するために利用できます。これらを現場観測や海況予測モデルと組み合わせることで、海流や沿岸環境の把握にも活用できます。
想定される利用分野は次のとおりです。
- 赤潮の発生・移動状況の把握
- 漁場環境の把握
- 沿岸域の環境監視
- 河川から海洋へ流出する濁水や土砂等の把握
- 海洋・沿岸生態系のモニタリング
利用者が「赤潮がいつ養殖場や沿岸に到達するか」といった具体的な情報を求める場合、衛星画像を提供するだけでは十分ではありません。
衛星観測、現地観測、海流・風などの海洋気象データ、予測モデルを組み合わせ、利用者が実際の判断や行動に活用できる情報として提供することが重要です。
森林・河川・環境への利用
衛星は、広い範囲を一定の方法で繰り返し観測できるため、森林、河川、農地、海洋などの環境変化を継続的に把握する手段として活用できます。
想定される利用分野には、次のようなものがあります。
- 森林の状態や変化の把握
- 森林伐採や森林火災の監視
- 河川や流域の環境監視
- 水の濁度や植生状態、土壌水分などの環境指標の推定
- 気候変動の影響把握
- 環境保全活動の効果検証
北海道の農場、森林、河川、海洋は、衛星データと地上調査を組み合わせた研究や実証を行うための重要なフィールドです。
HISPECは、北海道が有する多様な自然環境を、宇宙開発・利用の研究、実証および事業化の場として活用することを目指しています。
宇宙での実験

宇宙環境では、微小重力や宇宙放射線など、地上では得にくい条件を利用した実験が可能です。
生物の成長や変化、材料の性質、化学反応などを宇宙環境で調べることにより、地上では得られない知見や技術の創出につながる可能性があります。
HISPECは、大学、研究機関、企業などと連携し、宇宙環境を活用した生物・化学分野の研究や実証を推進します。
通信
人工衛星による通信は、地上の通信網が整備されていない地域や、災害によって通信インフラが損傷した地域においても、情報を届ける手段となります。
衛星通信を地上の通信網と組み合わせることで、離島、山間部、海上などを含む広い地域での通信環境の確保や、災害時の通信手段の確保に貢献できます。
衛星の特徴

オンデマンド衛星観測
HISPECが目指す衛星利用の一つに、利用者の要望に応じて観測を行うオンデマンド型の仕組みがあります。
想定される流れは、次のとおりです。
- 利用者が観測したい地域、時期、目的を送信
- システムが衛星の軌道、雲、観測条件、運用予定などを踏まえて観測の可否を判定
- 観測可能な衛星を選定し、必要に応じて新たな観測を実施
- 取得したデータを解析し、観測結果や解析情報を利用者に提供
この仕組みにより、「この圃場の土壌水分や水分ストレスの状態を推定したい」といった、利用者の具体的な要望に応じた衛星利用の実現を目指します。
国際協力への活用
小型衛星は、従来の大型衛星に比べて開発や運用に参加しやすく、宇宙開発の経験が少ない国にとっても、人材育成や技術開発の機会となります。
HISPECは、海外の宇宙機関、大学、企業などと連携し、次のような活動を推進します。
- 衛星開発・運用・利用に関する教育
- 衛星データや利用技術の共有
- 地上局や衛星運用ネットワークの連携
- 国内射場等を活用した打上げ機会の確保に向けた連携・調整
- 農業、防災、環境などの地球規模課題への共同対応
- 宇宙関連組織や研究拠点の設立に向けた人材・技術面での支援
各国が衛星、データ、技術および利用方法を共有することにより、宇宙を世界の持続的な発展に活用する国際的な枠組みの構築を目指します。